
ルートヴィヒ1世は情熱的なギリシャ愛好者でした。ミュンヘンを現在でも毎年数百万人の観光客を集める「イーザル川のアテネ」にしたのは、彼だったのです。そのためにルートヴィヒ1世は、古典的な古代様式の博物館を建て、ミュンヘンを古代芸術の主要巡礼地の一つにする宝物をイタリアとギリシャから購入しました。彼のアイディアに基づいて名声高い芸術家が古代を手本にしながら新たな芸術を創り出していました。最も有名なのは、テレージエンヴィーゼ公園にある記念堂とバイエルンを象徴する女神「バヴァリア像」でしょう。その写真は毎年、オクトーバーフェストの参加者の自撮り画像として世界を数十万回飛び回ります。
現代的な記念貨になるまでの最も重要な段階
ルートヴィヒ1世は、古代の思想を近代に流行させた人物でした。その発想の中で最も影響力があったのは、貨幣としての役割を果たすと同時に、大衆にプロパガンダを伝えていた、古代ローマを手本としたコインです。
ルートヴィヒ1世は、(理論上)流通し、かつ、そのプロパガンダを大衆に伝える目的で通貨として使用可能な記念貨を鋳造しました。ゲシヒツターラー(歴史ターラー)と呼ばれるそれらのコインにはルートヴィヒ1世とその王家の業績が描かれていました。中にはドイツ関税同盟のような経済的業績、大規模な建築物の完成、または、政権の座への就任や継承者の誕生などという王家と直接関係のあるイベントがありました。
現在は、ルートヴィヒ1世のゲシヒツターラーに対する情熱は知られています。コインのテーマを自分自身で選出しただけでなく、芸術家のデザインを何度も修正していたそうです。

フィリップ・フォン=フェラーリ氏とそのコレクション
ゲシヒツターラー銀貨が流通のために数千枚鋳造された一方で、再鋳金貨は1902年にバイエルン中央造幣局によってオリジナルの鋳型を使って鋳造され、全種類1枚しか存在しません。なぜなら、それらの再鋳金貨は19世紀の名声高い収集家の依頼のためだけに作られたからです。フィリップ・フォン=フェラーリ氏は1850年1月11日にパリで生まれました。当時最も裕福な層に所属し、切手とコインの最も重要なコレクションの一つを集めてきました。当時の主要な切手とコインの販売店を訪れ、ほとんどの場合は値切りすらせずに品々を直ちに購入していたそうです。さらに、20世紀当時はまだバイエルンのコインのオリジナルの鋳型が貯蔵されていたバイエルン中央造幣局を含め、様々な造幣局とも良いコネを持っていました。Numismatica Genevensis社のオークションで現在出品されている再鋳金貨は、そのオリジナルの鋳型を使って鋳造されたのです。
ところで、フォン=フェラーリ氏のコレクションは、没5年後の1922年にサザビーズ・オークション会社によって、フォン=フェラーリ氏の名前を出さずにオークションにかけられました。

エジプト王ファールーク
それらの印象深い再鋳金貨の次の名声高い所有者は、エジプト王国を1936年から1952年まで統治していたファールーク王です。ファールーク王も当時最も裕福な人物の一人であり、世界最大規模のコレクションの一つを集めてきました。1952年に王位を追われた後、ファールーク王のコレクションはロンドンのオークションハウスのボールドウィン社とサザビーズ社によってオークションにかけられました。2798ものロットと37の図版の1954年の印象深いカタログが、バイエルンの豪華な再鋳金貨のセットが含まれていたコレクションの重要性を示しています。その再鋳金貨のセットはNumismatica Genevensis社のオークションの一環として2022年11月14日に出品される予定です。
カタログのインターネット版はwww.ngsa.chからアクセスいただけます。印刷版は以下でお問合せください。
Numismatica Genevensis SA, Rond-Point de Plainpalais 1, CH-1205 Genève(ジュネーヴ、スイス)
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