数か月前、ロサンゼルス在住の男性が、非常に変わった発見をしました。この41歳の不動産仲介業の男性は、大分前に亡くなったお舅さんの家を片付けていて、地下の狭い物置で忘れられた宝に遭遇したのです。そこにはアメリカの複数の銀行の名入りの箱や袋が山積みになっており、多くは封がしたままでした。中身は1セント硬貨が、重さにして数トン、全て1982年以前に鋳造されたものでした。容器のラベル表示とざっと量った重量から、彼は100万枚ほどあると見積もっています。貯金を保管するのに手頃な方法とは言えないでしょうが、彼のお舅さんにはきっと何か考えがあったに違いありません。
非常時に備えて貴金属を蓄える
この男性がニューヨークタイムズに語ったところでは、彼のお舅さんはフリッツという名で、1960年代にドイツから兄弟でアメリカに移住してきました。彼は子供の頃、第二次世界大戦中と戦後の悲惨な体験の影響を強く受けて育ちました。家族が推測するには、彼はこの経験から他の多くの人たちと同様、非常時に備えて貴金属を蓄えたのであろうとのことでした。貴金属なら、最悪の経済恐慌が起きてもその価値を失わず、いざとなれば家族を養うために食料と交換することも可能だと考えたのでしょう。ただ、他の人たちがほとんど金や銀に投資していたのに対し、フリッツは銅に投資していたようなのです。
銅とその価値
これにはちょっと知識が必要です:1982年以前は、アメリカ合衆国の1セント硬貨は95%銅で鋳造されていたのです。しかし銅の価格がどんどん上がったため、1982年以降は銅メッキの亜鉛で鋳造されることになり、こうして金属の価値がコインの額面価格を超過することがなくなりました。既に当時多くの人々が、このまま銅の価格が上昇し続けると期待して、古い銅コインを大量に蓄え始めました。事実、銅製ペニーは現在1セントを遥かに上回った価値があります:目下の所、約2.5セントです。価格がさらに上昇する可能性に賭けている投資家もいます。
さて、どうしたらよいか?
フリッツの娘婿である男性も、奥さんと共にこの何トンもある銅貨の山を前にして、いったいどう処理したらよいか途方に暮れましたが、徐々にこうした情報を得るようになりました。彼らがまず最初にしたのが、コインとその潜在的価値に関して全く何の知識のない人なら誰でもすることでした。彼らはお金を銀行に預けようとしたのです。何といっても約100万枚の1セント硬貨は今でも公式の支払い手段で、10,000ドルという立派な価値があります。でもこれは成功しませんでした。アメリカの大手硬貨両替機チェーンの手数料は高過ぎましたし、銀行には場所がないという理由で、これほど大量の現金を受け取るのを拒否されたのです。
藁の山から黄金の針を探す行為?
ある日やっと、ある銀行の支店長がこの家族に、ペニー硬貨をただ銀行に預けない方が良いと教えてくれました。アメリカのコイン市場を知っている人は、小さな1セント硬貨の中にも稀少価値のあるものが多くあり、状態が非常に良ければ、1枚でも10,000ドル以上の価値があることをわかっています。それどころか、最も高価な1セント硬貨は何百万ドルにもなる可能性があるのです。この支店長はこのことを不動産屋仲介業の男性に説明したようです。彼がニューヨークタイムズに語ったところでは、『ペニー硬貨が100万ドルになることも夢ではない!』という言葉に仰天したとのことでした。
コインファンの読者の皆さんならきっとすぐに想定なさることでしょうが、この所有者にとっては驚きだったのです。ニューヨークタイムズはこの男性の言葉をこう引用しています:『1セント玉が1セント以上の価値があるかもしれないなんて、その時初めて聞いたのです』
骨折り損のくたびれ儲け?
それでは、いったいどうしたらよいのでしょうか? コイン100万枚全部に目を通して、『お宝』を選別するのでしょうか? 彼らは一度試みてはみたものの、すぐに諦めてしまいました。この家族にとって、稀少価値のあるコインを逐一探すよりも、たとえ大金を手に入れる機会を逃すことになったとしても、この邪魔な現金の山を早く片付けたいという願望の方が勝ったようなのです ― 多くのコインコレクターにとっては信じがたいことですが。この不動産仲介業の男性は、最近新聞広告欄に『コイン全部を一括で売却する』と掲載しました ― もちろん自分で取りに来てくれる人に限るとのことです。価格は25,000ドルです。銅の貴金属としての価値から概算した価格設定のようです。
このストーリーがメディアに登場してから、大勢の希望者が殺到したとのことです。何人かは、稀少価値のあるコインを探す手伝いをすると申し出ましたが、コインの所有者はこの話に応じるつもりがないようです。中身を見ないで『福袋』を購入するのが結局誰なのか、袋の中に期待した稀少コインが本当に隠れているのかはわかりません。いずれにせよ、購入した人が賭金の25,000ドルを支払ったことを後悔しないことは、賭けてもいいです。