Greysheet提供:市場の動き(2022年5月)

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今月のこのコラムを書きながら、同時に別の画面でスタック・バウワーズ(Stack’s Bowers)のスプリング・ショーケース(AKAボルチモア) のオークションを横目で見ています。私を含めた多くの人にとっては想定の範囲内でしょうけれど、これまでに驚くような結果がいくつかありました。その好例はレアリティ・ナイトのセッションで、PCGS MS67RD 1909-S VDBが168,000ドル(日本円で約2175万円)で落札されたことです。このコインと同じPCGS MS67RDのスペシメンが10万ドル台(日本円で約1千万円台)をつけたのは、わずか3ヶ月前の今年1月以来、3度目のことで、簡単に新記録(前回の最高値より43%増)を達成しました。PCGSは、このレベルのコインは15枚存在し、67+以上のレベルは1枚もないと報告しています。この1枚の評価額を高める試みがあるとの期待感から高値がついたのでしょう。このリンカーン・セントはレアリティ・ナイトセッションに出品されたトップ10枚の中で唯一の金貨以外のコインでした。

ケロッグ&ハンバートの金塊を除いて、このセッションの金貨の最高値は1870年のプルーフ・ダブルイーグルのPCGS PR64 DCAMの36万ドル(日本円で約4,672万円)で、この価格は想定の範囲内でした。PCGS AU58 1808のクォーターイーグルは192,000ドル(日本円で約2,492万円)で落札されましたが、これも予想通りの結果と言えるでしょう。このロットが注目されたのは、このPCGS AU58のコインが、13回の鑑定にもかかわらず、1999年以来公開されたオークションに現れていなかったという事実です。現在のスタックス・バウアーズの前身のひとつであるバウアーズ&メレナ社が1999年に販売したときは、34,500ドル(日本円で約448万円)でした。最高ランクのロットの中でやや下位にあるコインの中で、PCGS XF40と格付けされた1870-CCダブルイーグルが105,000ドル(日本円で約1,363万円)となり、これまでの記録のほぼ2倍を記録しました。

レアリティ・ナイトの直後に、ポール&ロザリー・ジトー博士夫妻が1990年代後半から2000年代の前半に集めたコレクションの中から厳選された89ロットが登場しました。現在の市場はこのようなレベルのコインの需要が高まっていますから、この結果の成り行きに個人的に強い関心を持っていました。私は全セッションをライブで見ていましたが、多くのロットがほぼ予想通りの結果となりました。最高落札価格の2ロットは、有名なロールド・エッジとワイヤー・エッジの1907年のインディアン・イーグルで、ロールド・エッジはPCGS/CAC MS67で、1,140,000ドル(日本円で約1億4,795万円)で落札されました。

CAC社に認定された2枚ということもあり、このレベルのコインは2020年3月に576,000ドル(日本円で約7,475万円)で売却されており、これも前回の高水準となりました。60万ドル以下だったコインが2年で1千ドル台(日本円で約1億円台)になったということは、確かによくあることではありませんが、これは最高のコインへの需要の高まりと資産価格の全体的な高騰の両方を示しています。同様にNGC MS68と評価されたワイヤー・エッジも840,000ドル(日本円で約1億902万円)で落札されました。CAC社に認定された2枚の内のもう1枚は、2019年8月に432,000ドル(日本円で約5,606万円)で売却されました。リバティ・ゴールドも鮮やかに輝く結果となりました。NGC/CAC MS64 1860年製のダブルイーグルは12万ドル(日本円で約1,557万円)で落札され、5万ドル差でこのグレードの新記録を樹立しました。有名な希少コインとしてよく知られている、PCGS MS64に格付けされたジトー・コレクションの1872年のイーグルは、96,000ドル(日本円で約1,245万円)で落札されました。このグレードのコインのたどった軌跡は際立っています。1995年に46,750ドル(日本円で約606万円)で売却されたコインが、同グレードの別のコインが2018年には48,000ドル(日本円で約約623万円)になり、その後96,000ドル(日本円で約1,245万円)に跳ね上がりました。このことは、過去2年間に価格が急騰したことと、CGSの古いグリーンラベルのホルダーに収められたジトー・コレクションのコインの鑑定の一貫性が時間とともに変化するということを、改めて強調しています。1872年のコインと同様な話として、1863年のイーグルがあります。NGC AU58に格付けされたジトーのスペシメンは、90,000ドル(日本円で約1,167万円)をもたらしました。NGC AU58のコインの過去のオークションへの出品は、1994年と2005年と、かなり前ではありますが、3万ドル(日本円で約389万円)を下回ることはありませんでした。

ボルチモアのウィットマン・エクスポで私が交わした会話の話題の一つに、希少コインの市場の半年後の予想についてがありました。保守的な人は今のように市場が騒がしくなると、明らかに不安になります。バランスシートがしっかりしているディーラーであれば、相場が下がっても、値が下がったところで仕入れをすればよいので、価格の下落に耐えられますが、多くのディーラーは、高値の在庫を抱えてしまい、利益を出すために売るに売れない状態になってしまいそうです。今年最初の4カ月同様、ディーラーはコインの卸売りに5%から15%追加で支払わなければならないのは、コイン市場が動き続けているためで、それを喜んで支払っています。世界の物価が上昇し続ける限り、資産の値上がりは一般的なインフレを上回るというのが一般的な見方です。ただし、限界点があります。コイン市場にとって重要なのは、調整が安定しているかどうか、つまり、価格が下落しているときに、価格の底上げをしてくれる買い手が存在するかどうかです。このような時にこそ、絶好のチャンスが訪れます。

 

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