確かに、12に比べれば、10の有用性はかなり限定的である。現代の私たちから見れば、3分の1、とくに4分の1の整数に割り切れる(整数として)基数を持つことは、重要でないように思えるかもしれないが、前近代社会の多くにとっては、基数体系の必須条件であったのである。マヤ文明では、10を4等分する問題を回避するために、10を2倍して20を基数として使っていた。また、ユキ族と他の中央アメリカや北アメリカの先住民は、8を用い、数字そのものではなく、数字と数字の間にある8つのスペースを数えていた。封建時代における日本では、同じ問題を解決するために、16(4x4)を基数とした。すなわち、16は2分の1、4分の1、8分の1、16分の1に分割することができ、非常に機能的な整数を生み出すことができるからである。興味深いことに、当時の「三貨(金・銀・銅)制度」において主要な貨幣単位である「両」は、小額の買い物のために4,000文(銅貨である銭)に分割することができた(別の機会に「二分」および「一分」、「二朱」、「一朱」などの金・銀貨を紹介することにしたい)。デジタルの世界でも、2、4、8、16、32、64、128という一連の数字は、コンピューターのメモリー(メガバイトとギガバイト)などで、この「非常に便利な数字」が使用されている。
もちろん、10進法と12進法を一緒にしているのが基数60で、これは、私たちの最初の文明のシュメールならびにメソポタミア、アッシリア数秘術に由来している。円は360度、1時間は3,600秒(5分刻みで12時間、1日は12時間)、1年は360日(30日×12ヶ月、祝祭日は5.2422日)であり、私たちが住む地球も360度である。法律、マネー、アプリコットとその他の数多くのものを私たちに与えてくれた古代シュメール人に対する私たちの恩は、時間と空間を構想し、計測し、計算するための数の使い方にも及んでいるのである。
本シリーズは、CoinsWeeklyに以前掲載された記事を日本人の読者様向けに修正したものです。英語の原文はこちらでご覧いただけます。
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