Greysheet提供:市場の動き(2022年3月)

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パトリック・イアン・ペレズ(ミハウ・スクビシュ訳)

 

コインの価格に着目していると、価格が途切れなく上昇を見せていることがわかります。1月に開催されたほとんどすべての米国大型オークションでは、米国コインもしくは、その他の地域のコインいずれも、数多くのコインの記録が各々更新され、これまでの最高総額を超える、またはそれに迫るような金額が達成されました。合計1億200万ドル以上の価値に相当するコイン及びその関連商品が1月に取引されたことになります。

希少コインの市場は非常に健全な状態にあり、新しい記録が更新されるたびに、様々なオンラインフォーラムや出版物に多くの意見や分析が掲載されます。市場と価格の展開に関する結論は出したくなるものなのです。しかし、過去に書いたように、希少コイン市場は、株式市場や最近の暗号通貨市場のようにテクニカル分析に適しません。確かに、個々の希少品や特定のコインのシリーズに関する価格分析は有用ですが、これらは歴史的な文脈で見るものであり、何が起こるかよりも何が起こったかを考察するものです。重要なのは、希少コインが依然として収集家によって主導されている市場であるということです。

疑いのない一つの事実は、ディーラーに新たな品々が不足していることです。確かに、昔からあるコイン・ショーのような伝統的な大型オークションは長い間、重要なコレクションを市場に出すための場でしたが、現在では、オンライン限定の特別オークションや毎週開催されるオークションの発展が、収集家やディーラーにさえも、非常に多くの顧客に商品を販売する機会、すなわち販路をもたらしました。これは、選択肢の拡大ゆえに自分にとって何がベストなのかを考えなければならなくなったため、直接ディーラーへそのコレクションを売却する収集家たちに影響を及ぼしました。その結果、より多くのディーラーが在庫の確保、及びその顧客の欲しがっているコインの調達のために、これらのオークションに頼らざるを得なくなったのです。このような収集家とディーラー間の競争は常に存在していましたが、利便性及び前述のコインの不足という理由から、現在は一層激しいものとなっていると私は考えています。この競争は、しばらく見られなかったほど価格を高騰させており、ゆえに卸売価格と小売価格の水準を決めることは難問になります。なぜなら、誰が市場を急騰させているかを確定できないからです。ディーラーたちが小売価格と一般的に考えられている値段でコインを購入しているならば、卸売価格も上昇すべきです。そしてこの現象は他の複数の分野、特に米国初期の金貨、カーソン・シティ・コイン、米国テリトリアル金貨、そして特定のモルガン・ドル銀貨において既に見られました。しかし、そこには多くの微妙な差異があり、同時に不透明な部分も多いです。在庫としてコインを持つディーラーは真の購入者であり、彼らが払っている価格が卸売市場を正確に反映しています。もし3%の委託料を受ける一人のディーラーが、どんなに高い価格でも支払う覚悟のある顧客のために、あるコインをオークションで落札するために価格を激しく高騰させた場合、これは卸売市場の正確な反映なのでしょうか。

オークションに出品する商品が不足しているもう一つの原因は、多くの落札されたコインが短い期間で市場に再登場しないということです。これは、購入者が素早い利益を期待して、短期的に価格を予測するのではなく、長期的に保有することを示しているので、ポジティブに評価すべきことです。というのも、このような投機的な動きほど、盛り上がった市場を冷え込ませるものはなく、現在、他のコレクターズマーケット、特に漫画やスポーツ以外のトレーディングカードでもその傾向が見られます。これは、購入者が若手の専門家を含めて、収集・投資スパンが長期である個人であることを意味しています。そしてこれはまた、私の上述の論点ですが、希少コインが年月をかけて有形資産として信頼のできる投資であることが周知されるようになりましたが、市場に安定するためには収集家によって主導されているものであり続ける必要があります。

さらに、現在、市場に登場しようとしているコインにとって鑑定機関の残務がネックになっていることにも言及すべきです。PCGSもNGCも提出から鑑定完了まで膨大な時間がかかるため、ディーラーが未鑑定のコインをその初めての鑑定に提出するか、ある鑑定業者から別の鑑定業者に乗り換えるにしても、コインが手元に戻ってくるまで通常より時間がかかっています。両方の鑑定機関が昨年買収されたにもかかわらず、それぞれの会社の新たなオーナーの投資は主にコイン以外の分野に集中させられました。貨幣の専門家がなかなかいないのは周知の事実ですが、経験豊富な目利きが切実に必要とされています。

 

当コラムは元々CDN Publishingの「Monthly Greysheet」のものですが、こちらで初めて日本語で公刊されます。英語の原文はGreysheetのホームベージからお読みいただけます。

CDNの主力商品である「Monthly Greysheet」の定期購読には、以前のGreysheetの刊行物、Bluesheet及びGoldsheetニュースレターにすでにあった価格表示を含めて、米国のほぼ全てのコイン及び現代中国の発行物の市場価格表示を132ページに収録しているフルカラー雑誌が付属されています。

Coin Dealer NewsletterGreysheetコイン値付けを1963年以降定期的に刊行しています。Monthly Greysheetの各巻は収集可能な米国のコインの最近の卸売市場についての情報が満載で、世界中のディーラー、投資家、及び熱心な収集家にとって必要不可欠な雑誌とみなされています。

 

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