ロンドンのローマ・ヌミスマティックス社の経営者兼オーナー、リチャード・ビールが、ニューヨークでNYINC( ニューヨーク国際ヌミスマティック・コンヴェンション)へ向かう途中で逮捕されたことが、3月に公表されました。ビールはマンハッタンの検察に、イタリア、ギリシャ、パレスチナ・ガザ地区からコインを不法に入手し、コインの違法な出所を隠匿するために出自証明書を偽造した容疑をかけられています。ビールは、重窃盗罪、盗品所有罪、共謀罪、重詐欺罪で起訴されました。
同容疑者に対する捜査の焦点にあるのは、彼が出自証明書を偽造したとされる2つのコインです。両方とも2020年10月29日、ロンドンで開催されたローマ・オークション20で販売されました。1つ目のコインは有名な ブルートゥス(ブルータス)のイードゥース・マルティアエ(EID MAR)アウレウス金貨で、このオークションで3,240,000ポンドという高値を付けました。これは今日まで世界最高額のアンティークコインとなっています。2つ目のコインはナクソスのテトラドラクマ銀貨で、紀元前約460年と記載されています。価格は240,000ポンドでした。
2つとも同じ出自証明書が付随していました。起訴状によれば、ビールは既にこの2つの疑惑のコインの出自証明書が偽造であることを認めているとのことです。
マンハッタン検察は、国際的に名の知れたコイン商イタロ・ヴェッキの共謀を告発しています。ヴェッキはビールにコインを販売目的で仲介したとされています。ビールはこの2つのコインを既に2015年、ニューヨーク国際ヌミスマティック・コンヴェンションである人物に売ろうとしたとのことです。2020年、これらのコインは素晴らしい出自証明書付きでローマのオークションに浮上しました。
このコインの本当の出所は今のところ分かっていません。イタロ・ヴェッキはまだ起訴はされていません。 2つのコインは検察に押収され、アウレウス金貨はギリシャへ、テトラドラクマ銀貨はイタリアへ引き渡されました。
コイン業界の反応
コイン販売業界全体が、ビールとヴェッキの偽造容疑にショックを隠し切れないでいます。国際コインディーラー協会(IAPN)会長のダニエル・F. セドウィック氏は私たちに、『IAPNはあらゆる不正な出自証明を断固非難します。このようなことは通常のコイン販売の実情とはかけ離れたものであると、声を大にして申し上げます』と述べています。