サルトン・コレクションのコインから見るドイツの都市景観

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ドイツの歴史において、貿易を通じて偉大な富を築き、独自の貨幣を鋳造していた自由都市が数多く存在しました。その市民は近世のコイン、特に銀製の大きく代表的なターラー硬貨において、自分たちの都市の印象的な景観を自信を持って描きました。いわば金属でできた絵葉書のように、現在変わってしまった過去の場所を私たちに見せてくれています。

こちらでは、3月22日にキューンカー(Künker)オークション362に出品されるサルトン(Salton)コレクションのコインをもとに、いくつかの有名なドイツの都市をご紹介いたします。その際、コインで見て取れる名所と今日でも観光に行ける場所を比較いたします。

これらのコインの特徴は、金貨であることです。なぜなら、金貨は例外的な場合と特別な出来事にちなんだ場合のみ、詳細な都市の景観を刻印する意味があるほど十分大きく鋳造されていたからです。

 

ロット番号1609:ニュルンベルク 都市景観 ヴェストファーレン条約締結50周年にちなみ鋳造された1698年の5ドゥカート金貨 落札予想価格:30,000ユーロ

ニュルンベルク

まずは、ニュルンベルク市が描かれた1698年の5ドゥカート金貨をご紹介いたします。こちらの金貨では貿易と手工業の中心だった南ドイツの重要な都市であるニュルンベルクが東側から描かれています。その精巧な、細部にまでこだわったと言える描写では、この誇り高い都市の立派な防衛塔と特徴的な要塞がご覧になれます。

 

美しい旧市街、城、画家アルブレヒト・デューラーの遺産、有名なクリスマスマーケット、素晴らしい料理等でニュルンベルクは世界中からの観光客にとって人気のある旅行の目的地です。ニュルンベルクを訪れたことのある方ならば、印象的な名所が当時も現在も街並みにおいて際立っているため、こちらのコインを見てすぐにニュルンベルクであることに気が付くでしょう。

 

ロット番号1628:レーゲンスブルク 都市景観 鋳造年刻印なしの8ドゥカート金貨(1745–1765年) フランツ1世の称号とともに 究極の希少性 保存状態の抜群に優れた逸品 ほぼ未使用品 落札予想価格:50,000ユーロ

レーゲンスブルク

こちらの豪華な8ドゥカート金貨は、今日でも最も有名なランドマークであるシュタイネルネ・ブリュッケ(石橋)を描いています。この橋は1135年に築かれ、ドイツで残存している最古の橋だとされています。長い間、当地域のドナウ川を渡れる数少ない場所であり、貿易と関税から街に大きな富をもたらしました。

戦略的に重要なこの橋の防衛塔は、世紀の経過につれて取り壊されました。残っているのは、コインでも見分けられる橋の端にある塔のみです。同様に、橋の真後ろにある塩の倉庫も認識できます。この非常に大きい倉庫は、名前の通り、レーゲンスブルクで取引されていた、最も重要かつ価値のある商品であった塩の保管するために使用されていました。

写真:Doktent / CC BY-SA 4.0.

また、その後ろには右側の岸の旧市街の聖ペトロ大聖堂とその双塔が認識できます。この中世の大聖堂の双塔の建設が完了したのは1872年だったので、コインには現在の高さより低く描かれています。

 

バイエルン マクシミリアン1世 1640年の5ドゥカート金貨 ミュンヘン ミュンヘン市の防衛設備の新建設にちなみ鋳造 逸品 極美品から未使用品 落札予想価格:10,000ユーロ

ミュンヘン

オクトーバーフェストと地元サッカークラブの他にも多くのことで有名なバイエルン州の州都ミュンヘンは、こちらの1640年の5ドゥカート金貨で描かれています。街の詳細はこちらのコインでは見分けづらいですが、このコインが何を記念して作られたのかはよくわかります。すなわちバイエルン公マクシミリアン1世が当時建設させた、新たな街の防衛設備を記念してこのコインが作られました。そのため、稜堡や堡塁がはっきりと見分けられます。その後、多くの都市と同様に、防衛設備が取り壊されることになりました。現在では、その痕跡のみが僅かに残っているだけです。

 

写真:Diliff / CC BY 2.5

都市の描写の輪郭が定かでなく、城壁も現存していないにもかかわらず、これがミュンヘンの描写であることは一目瞭然です。それは、ミュンヘンの最も有名なランドマークである、町の中心部にある100メートルもの目立っている丸屋根双塔のフラウエン教会(聖母教会)のおかげです。

 

ロット番号1573:ハンブルク 都市景観 J.レーテケ(Reteke)によりヨーロッパの銀行大都市アムステルダム、ハンブルク、ニュルンベルク、ヴェネツィアを記念して1689年に鋳造された10ドゥカートの価値のバンクポルトゥガレーザー硬貨 ヴィンツ かき傷 極美品 落札予想価格:25,000ユーロ

ハンブルク

こちらの立派な金貨では北ドイツの貿易中心地、誇り高いハンザ同盟都市ハンブルクがご覧になれます。1689年に鋳造されたこちらの10ドゥカートの価値の硬貨にはハンブルクが、忠実にではありませんが、数多くの塔と防衛設備に囲まれて描かれています。エルベ川は大小の船が行き交っていますが、これは海運の重要性を物語っています。ハンブルクは当時、神聖ローマ帝国の最も重要な貿易港だったのです。

 

写真:www.elbpresse.de / CC BY-SA 4.0

ハンブルクは現在、現代的な大都市であり、ドイツ第二の都市です。いくつかの塔が時間の経過と戦争を生き延びたましたが、現在では高層ビルが隣にそびえ立っています。17世紀の街の防衛設備は消えてしまいました。

 

写真:Frank Schwichtenberg / CC BY-SA 4.0

ハンブルクは過去も現在も大きな港都市です。しかし、コンテナ船の海運は、前方にずらされた港地区に移動させられました。コインにあるような盛んな海運は現在、毎年祝われる、船のパレードで世界中から数千人のゲストを招く「港の誕生日」にのみ見られます。ハンブルクの新しいランドマークである、2016年に建設が完了したエルプフィルハーモニー(写真奥左)は、コインにはもちろん描かれていません。

 

バイエルン ルートヴィヒ1世 1846年のドゥカート金貨 ライン川黄金 極美品から未使用品 落札予想価格:2,000ユーロ

シュパイアー

こちらのバイエルン王ルートヴィヒ1世のドゥカート金貨では、ライン川の黄金で作られたと誇らしげに示されています。それに加えて当時バイエルン王国に属していたライン川沿いに位置している街、シュパイアーが描かれています。その描写はこの街のランドマークのシュパイヤー大聖堂のみに限られています。この印象的なモニュメントは、現在でもその壮大さを失っていません。1025年に建設が開始されたこの大聖堂は世界で残存している最も大きいロマネスク建築の教会です。この大聖堂は、中世の有名な皇帝や王が多く埋葬された場所でもあります。

 

写真:Gerd Eichmann / CC BY-SA 4.0

建設から何世紀にわたり破損・再建・改築を繰り返されてきたこの建物は、こちらのコインが鋳造された当時は塔が現在より2基少なく、50年前に老朽化した教会の西端が再設計されたため、やや短くなっていたのです。そのため、こちらのコインはユネスコ世界遺産の建設の歴史を物語る興味深い証となっています。

 

写真:AnRo0002 / CC0

ライン川と大聖堂の描写の視点も興味深いです。なぜなら、現在ではもうこの形では存在しないからです。ライン川は19世紀にその河道が直線化され、大聖堂の近くを流れなくなったのです。とはいえ、大聖堂の壮大さは、遠くから見ても伝わります。

 

オークション362の全てのコインはオンラインカタログでご覧いただけます。

 

オークション会社に関する詳細は、Künker社のウェブサイトにアクセスしてください。