サイモン・ジェイムス・バイスウェイ著
明治元(1868)年に成立した明治新政権は、貨幣制度の整備につとめたが、当面は徳川家康が慶長6(1601)年に創設した貨幣制度である「三貨(金、銀、銭)制度」を受けついだ。しかし、江戸時代の経済は完全な貨幣経済ではなかった。市場では貨幣を媒介にした取引が行なわれていたが、幕府は大名に石高を基準にした所領を与え、大名はその所領のなかから家臣に禄や扶持を与えていた。貨幣経済と非貨幣経済の双方が併存していたわけである。市場を見ると、大きな産業都市、特に江戸、大坂、京都といった三都の商人の間において、三貨の間の価値の変動を利用して利益をあげることが一般的に行なわれており、両替屋や金貸しがそこにおいて大きな力を持っていた。
参考文献
日本語
三上隆三『円の誕生』増補版(東洋経済新報社、1989)。
山本有造『両から円へ』(ミネルヴァ書房、1994)。
吉野俊彦『円の歴史』(至誠堂新書、1955)。
英語
Matsukata, Report on the Adoption of the Gold Standard in Japan, (Tokyo: Government Press, 1899).
著者についての詳細はCoinsWeeklyのWho’s who からアクセスできます。(英語)