日本貨幣関係史2:江戸時代における貨幣の価値低下および紙幣の発行

多様な藩札の例
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サイモン・ジェイムス・バイスウェイ著

幕府の三貨制度は、新しい市場経済社会を本格的に引き起こすまでには至らなかったけれども、その間、通貨価値の下落、すなわち通貨の質の低下と量の増大に加えて通貨の改鋳と再発行が繰り返されるなかで、三貨制度の実質的意義が変化し、幕府を弱めることにつながった。さらに幕府の力の低下とともに、いくつかの藩において通貨偽造が行なわれるようになり、幕府の貨幣制度そのものの信用が低下することになった。また、各藩は、債務を処理するために藩内だけでしか通用しない紙幣である藩札を発行した。藩札はしばしば「金札」あるいは「銀札」とよばれていた。実際にはそのような藩札の価値と金・銀の地金の価値との間には関係がなかったにもかかわらず、藩札は、藩のなかでは金札とか銀札ということで名目的な効果をもって通用した。このほか、藩札の価値は稀に米何石で表記されることもあった。要するに、幕末までに1,694種類にのぼるさまざまな形や模様の藩札が発行されたことは、江戸時代の貨幣制度の信用低下を意味する以外の何ものでもなかったのである。

写真はhttps://commons.wikimedia.org/wiki/Category:Hansatsuからの引用。

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