日本貨幣関係史5:明治政権発足当初の紙幣発行

太政官札(金一両札、1868年発行)
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明治政権は、新しい中央集権国家の設立を進める過程で、必要な資金を得るために紙幣を発行した。新政権は正貨と地金をほとんど持っていなかったので、それまで発行されていた1,694種類の藩札に加えて新たな紙幣を発行した。明治元(1868)年閏4月19日の「金札製造通用方法を令す(第316)」という布告によって「金札」の発行が公布された。これらの「金札」は「太政官金札」とよばれ、発行額は4,800万両にのぼった。新政権は、また明治元(1868)年5月から明治2(1869)年12月までの間に、「太政官金札」に加えて小額面の「民部省札」750万両を発行した。明治4(1871)年10月10日から、新政権は予算の歳入と歳出を均衡させるために、「特別な待遇」を受けていた為替座三井組の財務担当者に「大蔵省兌換証券」の発行を独占的に許可していた。明治5(1872)年2月までに発行された「大蔵省兌換証券」の額は680万圓であった。さらに新政権は北海道開拓の費用をまかなうために「開拓使兌換証券」という紙幣を発行した。明治5(1872)年1月から4月までに発行された「開拓使兌換証券」の額は250万圓であった。このように紙幣の種類が増えるにしたがって、これらの紙幣の購買力は減少したのである。

 

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