『船』はコイン蒐集家の皆様に最も愛好されるモチーフの一つです。古代のガレー船にしても、威風堂々とした帆船にしても、近代の鋼鉄製の巨大な蒸気船にしても、その美しいデザインを愛で、航海の歴史に思いを馳せる蒐集家は大勢います。それでは数百年にわたる船をモチーフにしたコインのデザインを駆け足で見ていきましょう。
古代
古代ギリシャ人とフェニキア人は抜群の船乗りとされていました。彼らにとって地中海交易は非常に重要で、地中海の島々や沿岸に数々の商館を設立していました。そのため、彼らの立派な船がコインのモチーフに刻印されています。縦長の古代のガレー船は、大抵漕ぎ手が人力で動かしていましたが、彼らは部分的に上下に列を作って座って漕いでいたのです。
古代ローマ人は地中海を『我らが海』(ラテン語でマーレ・ノストルムMare Nostrum)と称していました。古代ローマのコインに刻印されたガレー船は、マルクス・アントニウスが古代ローマの内戦中に鋳造させたこのコインに見られるように、軍事的威力を象徴していることが多いです。
アンティークコインには、スペースの都合でしばしば目が描かれているプローラと呼ばれる船首のみ刻印されていることが多いです。
中世
中世のコインに船のモチーフが使われることは非常に稀です。中世前期、カロリング朝の幾つかのコインでシンプルな船の図案が見られます。当時建設された長い船は、古代のガレー船と似た形状でした。時代と共に、船の形状はだんだん高く幅広になり、 帆船に移行していきました。こうした船舶は船倉が大きく取れ、商取引に向いていたのです。
中世の最も重要な金貨の一つが、船がデザインされた金貨です。この金貨は遠方との交易に多用され、中世後期にイギリスとオランダで鋳造されました。この金貨には船上にいる王の姿が見えますが、このモチーフはイギリスがフランス艦隊に勝利した記念に、エドワード3世(在位1327年 – 1377年)のもとで初めて鋳造されました。