コインに刻印された船、その2

[bsa_pro_ad_space id=4]

『コインに刻印された船、その1』では、古代および中世の船の描写を見てきました。『その1』は下記をご覧ください。

 

近世

近世において船は権力の象徴でした。 ヨーロッパの帆船は世界の隅々にまで進出しました:ポルトガルのカラベル(3本マスト快速帆船)が新しい航路を発見し、スペインのガレオン船がヨーロッパに富をもたらし、軍艦が19世紀におけるイギリスの世界大国としての地位を確保しました。この時代のコインやメダルには、威風堂々とした帆船の美しい描写が数多く見られます。

 

イギリス、ブレダの和約(第二次英蘭戦争の講和条約)記念の金メダル、1667年、キューンカー社オークション232(2013年)より、ロット番号304

特にイギリスのコインとメダルに、よく船のモチーフが見られますが、これはイギリス海軍の船が世界帝国へと発展していく礎と捉えられていたことによります: ブリタニアは大海原を統治する(Britannia rules the Waves)のです!

 

オランダ、銀メダル、1653年、オランダの海軍提督、マールテン・ハーペルソン・トロンプのシェヴェニンゲンの海戦における戦死、キューンカー社オークション363(2022年)より、ロット番号2557

この海戦の推移は英蘭戦争に決定的な結果をもたらしました。大きなメダルには海戦の勝利の様子が細かく描写され祝賀されています。ここでは船の索具や大砲、船旗など帆船のディテールが認識できます。

 

 

ブランデンブルク、ギニー・ドゥカート、1688年、キューンカー社オークション331(2020年)より、ロット番号13

さらに、船をシンボルとして描く場合もあります。寓意としての船は国を表し、領主が舵を取ります。運命もしくは神の意志が風となって、帆船の進路を決めるのです。

 

 

ハンブルク、ポルトガレーザー金貨、10ドゥカート、1689年 キューンカー社オークション362(2022年)より、ロット番号1573

そして、裕福な商人の街の港を描写するのに、沢山の船がなかったら…と考えれば分かります。船は権力と強さ、もしくは国家の象徴だけではなく、しばしば富と商業の象徴でもあるのです。

 

現在: コレクション用コインに刻印された船

現在船のモチーフが刻印されたコレクターコインは沢山あります。このテーマは、蒐集の対象として非常に人気があります。今日では特に有名な船がコインに刻印される事が多いです。

 

クック諸島、20ドル、2022年、タイタニック、写真: CIT

1912年に沈没した有名なタイタニック号のような運命を辿った船も、その中に入ります。

 

 

アメリカ合衆国、½ドル、1992年、コロンブスによる新大陸発見500周年記念、写真: アメリカ合衆国造幣局

もちろん大航海時代の英雄たち、クリストファー・コロンブスのサンタ・マリア号やジェームス・クックのエンデバー号も欠かせません。

 

 

 

イギリス、2ポンド、2020年、メイフラワー号、写真: イギリス王立造幣局

メイフラワー号は1620年、イギリスから新天地アメリカへの初期移住者たちを乗せた船として有名です。

 

 

 

クック諸島、1ドル、2013年、 HMS ヴィクトリー、写真: CIT

有名な海戦で活躍した船も人気があります。例えばHMS ヴィクトリー(イギリス海軍の戦列艦)はイギリスのネルソン提督の旗艦で、1805年、トラファルガーの海戦で大活躍しました。

 

 

 

スペイン、10ユーロ、2021年、レパントの海戦と王立ガレー船、写真: Real Case da la Moneda

他国に比べ、航海の伝統に特に誇りを持っている国々があります。例えばヨーロッパの大航海時代、世界を発見したポルトガルとスペインは、海をテーマにした多数のコインを鋳造しています。

 

 

ギリシャ、1、2、5セント硬貨の各国独自の面、写真: ギリシャ銀行

現在流通しているコインの中では、特にギリシャのユーロ通貨の小銭を挙げたいと思います。よく見られる1、2、5セントに、古代から現代のオイルタンカーまで、様々な船が描かれています。

 

 

船にご興味がおありなら、古代から現代まで、コレクションの範囲は実に多様です。