忘れ去られたD-Day : 10対12 【第1部】

20世紀初頭に作成されたこの一覧表が示すように、英国の貨幣は10進法に基づいていなかったため、それを他の通貨に換算するのは特に複雑であった。1971年のD-Day後、これはより容易になった。
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あまり知られていないが、1971年2月15日、何世紀にもわたる英国の伝統は、ポンドの10進法化によって終わりを告げたのである。この「10進法の日」は、英語で「D-Day」または「Decimal Day」と呼ばれているが、この日までイギリスの貨幣ならびに通貨単位は240に分割されていたのだ。最小単位は、1ペニー(ローマ時代のデナーリの「d」がつく)、12ペニーで1シリング(ローマ時代のソリディーの「s」がつく)、20シリングで1ポンドである。ポンドの当初貨幣記号は、「₤」で2本の横棒、現在は1本の横棒が一般的で、旧貨幣制度と同様にポンドに使用され続けたローマ字の「librae」に由来するものである。しかし、10進法の日から、ポンドは、新たに100ペンスに分割されることになった。シリングは、過去のものとなり、「1ペニー」は、「1(新)ペンス」となり、「1d」ではなく、「1p」と表記されるようになった。このことは多くの英国人に、複雑な心境をもたらした。大蔵省からの正式的な宣言がなされた結果、落ち着きを取り戻し、英国ポンドは残ったものの、日常生活で使ってきた「お金」、つまり補助貨幣ならびに硬貨は引き揚げられ、奪われたのである。世界金融市場で「スターリング(sterling)」と呼ばれた英国ポンドは、いまだヨーロッパと世界の通貨としての体裁を保っているが、それを構成していた硬貨はすべて廃棄され、新しい10進法の硬貨に置き換えられたのである。

 

こちらのイギリスの新しいペンス硬貨セットは、1971年に10進法に移行する数年前に発行された。左側には、新しい通貨がどのように分割され、いつからどの古い硬貨が流通しなくなるのかが説明されている。

本シリーズは、CoinsWeeklyに以前掲載された記事を日本人の読者様向けに修正したものです。英語の原文はこちらでご覧いただけます。

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